2026年7月22日時点の情報に基づく
空き家特例(相続空き家の3,000万円控除)とは——使える条件と期限
相続した空き家を売却するとき、要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「空き家特例」(措法35条3項)。例えば譲渡所得が3,000万円ある人がこの特例を使えれば、課税譲渡所得が0円になり、本来かかるはずだった税額(長期譲渡なら概算で約600万円)がまるごと不要になる可能性があります。適用期限は令和9年12月31日までの譲渡です。
使える条件の全体像
要件は数が多く逐条で読むと挫折しがちですが、実際は「物件の条件」「亡くなった方の条件」「売り方の条件」の3つのグループで捉えると整理しやすくなります。
① 物件の条件
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物登記がされていないこと(分譲マンションは原則対象外)
② 亡くなった方(被相続人)の条件
- 相続開始の直前まで、その家に一人で住んでいたこと(老人ホーム等への入所は一定要件のもと例外あり)
③ 売り方の条件
- 相続または遺贈により家屋(とその敷地)を取得したこと
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
- 譲渡対価が1億円以下であること(分割譲渡や共有名義の場合は合算して判定)
- 相続から譲渡まで、事業・貸付け・居住のいずれの用にも供していないこと
- 耐震基準に適合しているか、取り壊してから譲渡すること(例外は後述)
- 第三者への譲渡であること
※本記事の一般的な要件説明は、個別の税務判断を保証するものではありません。
つまずきやすい3つの論点
老人ホームに入っていた場合
亡くなる直前に老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の要件(要介護認定等を受けていたこと、老人ホーム入所後に家屋を賃貸等に供していないことなど)を満たせば、空き家特例の対象になり得ます。この論点は自己判断が難しく、当てはまるかどうかは個別確認が必要です。
マンションは対象外
空き家特例は「区分所有建物登記がされていない」ことが要件のため、分譲マンションは原則として対象外です。実家がマンションだった場合、この特例は使えないと考えて他の選択肢(通常の取得費控除など)を検討することになります。
耐震基準と「取壊して売る」ルート
建物を残したまま売る場合は耐震基準への適合が必要ですが、昭和56年以前建築の家屋は基準を満たしていないことも多く、その場合は取り壊してから土地として売却するのが現実的な選択肢になります。また令和6年1月1日以後の譲渡では、譲渡の翌年2月15日までに買主が耐震改修または取り壊しを行った場合も要件を満たせるよう緩和されています。
期限——相続開始から3年経過年の12月31日
適用期限は「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」です。例えば令和5年6月に相続が発生した場合、期限は令和8年12月31日になります。年をまたぐと期限が変わるため、年末に近い時期の売却では特に注意が必要です。
制度自体の適用期限(令和9年12月31日までの譲渡)とは別の期限であることにも注意してください。ご自身の場合の残り期間は、シミュレーターで相続開始日を入力すると自動計算されます。
取得費加算の特例とどちらが得か
相続税を払った人が一定期間内に相続財産を売却した場合に使える「取得費加算の特例」(措法39条)は、空き家特例とは選択適用(併用不可)の関係にあります。どちらも成立し得るケースでは、どちらが有利かを個別に比較する必要があります。この比較は変数が多く一般論では判断できないため、シミュレーターで両方の該当可能性を確認したうえで、税理士にご相談いただくことをおすすめします。
特例が使える価値のある物件か、買取価格を確かめる
空き家特例が使えるかどうかは、そもそもいくらで売れる物件かによって、控除の恩恵の大きさが変わります。老朽化や再建築の制約がある空き家は、通常の仲介より買取専門の査定の方が話が早いケースもあります。
手続きの流れと必要書類
この特例を使う際は、家屋の所在地の市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受け、確定申告時に添付する必要があります。あわせて登記事項証明書、耐震基準に適合していることを証する書類(取り壊す場合は不要)、売買契約書の写しなどが必要になります。
よくある質問
Q. 相続人が3人以上いる場合、控除額はどうなりますか?
A. 令和6年1月1日以後の譲渡では、相続人が3人以上の場合、控除額は1人あたり2,000万円になります(2人以下なら1人3,000万円)。人数によって総額の扱いが変わるため、共有名義での売却を検討している場合は特に確認が必要です。
Q. 譲渡価額が1億円を超えそうな場合はどうなりますか?
A. 空き家特例は譲渡対価が1億円以下であることが要件です。分割して譲渡した場合や共有者がいる場合は合算して判定するため、超えそうな場合は個別に確認が必要です。
Q. 相続後、少しの間だけ賃貸に出してしまいました。それでも使えますか?
A. 空き家特例は「相続の時から譲渡の時まで事業の用・貸付けの用・居住の用に供されていたことがないこと」が要件の一つです。短期間であっても賃貸に出した実績があると、この要件を満たさない可能性が高くなります。個別の状況によるため、税務署または税理士にご確認ください。
根拠
- 国税庁タックスアンサー No.3306(相続空き家の3,000万円特別控除の特例)
- 国税庁タックスアンサー No.3307(老人ホームに入所している場合の取扱い)
- 国土交通省「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例」制度案内ページ
本記事は国税庁が公表する情報に基づく一般的な税制の参考情報であり、個別の税務相談・税額の確定ではありません。特例の適用可否や申告については、税務署または税理士にご確認ください。